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偉大すぎる研究と大罪は紙一重!『オッペンハイマー』

山小屋の映画コレクション

8月は日本では「戦後○○年~」みたいな特集がよく制作されますね。

特に8/6前後は原爆に関するものが多くなります。

私はお盆休みは特にないので、いつも見逃し気味ですが、この時期にいつも気なっていたものの観れていなかった映画をじっくりと鑑賞しました。

2023年制作の『オッペンハイマー』です。

本作は「原爆の父」として有名なロバート・オッペンハイマー氏の人生を描いた伝記映画です。

アカデミー賞を7部門受賞したことでも有名ですね。

まずは公式HPからあらすじを

一人の天才科学者の創造物は、世界の在り方を変えてしまった。そしてその世界に、私たちは今も生きている。

第二次世界大戦下、
アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。
これに参加した J・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて
世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。
しかし原爆が実戦で投下されると、
その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。
冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、
オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。
世界の運命を握ったオッペンハイマーの栄光と没落、その生涯とは。
今を生きる私たちに、物語は問いかける。

日本人は原爆が投下された歴史事実は、誰でも知っていますが、原爆が生まれた経緯や開発者についてはあまり知らないと思います。

その意味で、本作をしっかりと鑑賞する意味はあるのかなと感じます。

それでは、本作のGood pointを少し紹介します。

 

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研究の延長だったはずなのに・・・(ネタバレあり)

本作はアメリカ人物理学者のロバート・オッペンハイマーの生涯を描いていて、最初は量子物理学の研究に勤しんでいたオッペンハイマーが、第二次世界大戦下で極秘プロジェクトである「マンハッタン計画」のリーダーに指名されたところから、複雑になっていきます。

難題がありながらも原爆の開発が少しずつ進み始めている段階では、オッペンハイマーもプロジェクトリーダー兼研究者として、やりがいを感じながら純粋に努力しているようにみえます。

しかし、完成が近づき、「原爆が完成したら本当に大勢の人間に向けて使用していいのか?」という疑問や反対意見が、周囲から聞こえるようになります。

ここからはオッペンハイマーの研究者的な側面よりも、政治的な側面が色濃く描かれていますね。

オッペンハイマーは原爆を開発している時に、他の研究者から更に威力の大きい水爆について提案を受けており、アメリカが水爆を作ることでソ連も開発を進めて、軍拡競争が始まると政府関係者に警告してます。

オッペンハイマーは友人や不倫相手に共産党員がいたため、戦後はそういった行動と合わせて政府高官の不興を買って、不当な批判を受けて公職から追放されていくのですが、個人的に本作で一番印象深かった場面は、オッペンハイマーが終戦後にトルーマン大統領と会話するシーンです。

オッペンハイマーが原爆が自身の想定を超える被害を広島と長崎に与えたことに苛まれ、「私の手が血塗られているように感じます」と大統領に伝えたところ、「あの泣き虫を二度と連れてくるな!」と大統領が激怒する様子が描かれています。(個人的にはこのシーンは結構腹立ちました)

広島や長崎の惨状を知っている日本人であれば、オッペンハイマーの感覚に全く違和感を感じませんが、自国民の命を預かり、戦争を終結させようとしたトルーマンの怒りも分からないでもないところが、「戦争はどんな人間も狂わせる」と改めて認識していまいます。

オッペンハイマーは戦後の様々な政治的な思惑によって、表舞台から姿を消しますが、後年に戦後の扱いは不遇であったことと、戦時中の功績を称えられて表彰を受けるのが唯一の救いではあります。

しかし、友人のアインシュタインからの言葉である「後に表彰されるだろうが、それは君のためではない」という言葉通り、実際には極端に不当な批判に加わっていた人々の自己満足のような贖罪のようにみえます。

本作はここで幕を閉じますが、自国への忠誠心を貫いて勝利に貢献したはずなのに、登場人物が全体的に幸福にならないところがモヤモヤする辺り、戦争関連映画らしさがありますね。

映画の尺が180分と長いですが、オッペンハイマー役のキリアン・マーフィー、「マンハッタン計画」を指揮するグローヴス役のマット・デイモン等の名優の演技に惹き込まれ、どんどん没入して時間は気になりません。

戦争映画は数あれど、原爆の開発者や開発の様子・使用の賛否について、ここまで描いている映画はないと思いますので、日本人としては一度じっくりと鑑賞してよい映画だと思います。

平和な現在がどうやってできたか考える時間も大事ですね。

ではでは。

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