最近、黒人公民権運動を主導したマーティン・ルッター・キング牧師の『自由への大いなる歩み』という本を読みました。
すでに絶版になっているので、なかなか書店で目にすることはないですが、黒人が差別を受けている状況をなんとか打破しようと「非暴力」で遂行した姿に感銘を受けます。
今回は、それに類似するような内容のアカデミー賞作品賞を受賞した映画を鑑賞します。
タイトルの『グリーン・ブック』は「黒人が旅行する時に使用するガイドブック」からとられています。
時代背景は1962年と60年以上前です。
キング牧師が黒人の権利を主張して、バスの乗車ボイコットをしたのが1956年ですから、すこしずつですが黒人の権利を白人が認識し始めた時期にあたります。
まずは公式HPからあらすじを
時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブ、コパカバーナで用心棒を務めるトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていた。ある日、トニーは、黒人ピアニストの運転手としてスカウトされる。彼の名前はドクター・シャーリー、カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいた。二人は、〈黒人用旅行ガイド=グリーンブック〉を頼りに、出発するのだが─。
グリーン・ブック公式HPより
といった感じで、黒人天才ピアニスト・シャーリーを運転手兼用心棒として雇われたトニーとの間の友情や当時の黒人差別のリアルさを表現した作品です。
最近は外国人への対応で国内で意見が割れる日本ですが、差別意識は比較的少ないと個人的にはかんじているところ、こういった作品を鑑賞することで、これまでの歴史や人権への興味が高まるような気がして鑑賞してみました。
センシティブな内容が結構あるので紹介が難しいですが、大きなネタばれなく魅力を紹介します。
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才能を差別が潰そうとするシーンがエゲつない!
本作品は実在の人物であるドン・シャーリーの実話を元に制作されていて、1962年という時代背景から、かなり露骨な黒人差別の描写が出てきます。
「黒人専用」というモーテルの看板や、お金があってもスーツの試着すら断られたりします。
特に天才ピアニストであるシャーリーの演奏を聴くために招待しておきながら、その主催者(白人)から「トイレは屋外の掘っ立て小屋のようなトイレを使うように」言われるシーンは、かなりの衝撃を受けます。シャーリーは「それならトイレのためにモーテルに一度戻ります。20分はかかりますよ!」と強気に答えて、実際にモーテルに戻るのは痛快さと衝撃の両方があり、リアルな差別の歴史をあまり実感できない私は、なんとも言えない気持ちになりました。
「この時代は、才能に恵まれても黒人であるだけで、同じような状況に心を折られた人は多かったんだろうな」と強く感じます。
用心棒のトニーは完全に両○勘吉!
そんな1960年代アメリカの暗い部分・醜い部分を描いてはいますが、コミカルなシーンや心温まるシーンも織り交ぜられて、楽しめます。
シャーリーにドライバー兼用心棒として雇われたトニー・リップはイタリア系アメリカ人でコパカバーナというナイトクラブで用心棒として働いていた実在の人物です。
トニーは元々黒人差別主義者で、自分のアパートの修理に来ていた黒人作業者が使用したコップを捨てようとするくらいの極端なタイプですが、シャーリーに半ば強引に雇われて生活のために渋々旅をともにします。
トニーは腕っぷしが強いが、ガサツ、いつもお金に困っていて、賭け事に強く、人情味がある人物として描かれていて、観ている内に「あれ?なんかこのキャラに馴染みがあるな」と感じてきます。そして途中で気づきました。
「トニーは、ほぼ両○勘吉だ!」と。
トニーがワイルドにケンタッキーフライドチキンを食べて、骨を車の窓から投げ捨てて、それを見たシャーリーが驚くシーンやシャーリーの演奏が終わるまでの間に地元民と賭けをしてしっかりと儲けるシーンは完全に一致しますね。
そんなトニーは最初は雇い主とはいえ黒人のシャーリーを差別的な目で見ていますが、そのピアノの才能や本人の苦悩、なぜ黒人差別が強烈な深南部まで演奏ツアーを組むのかを知るにつれて考え方や行動が変わっていくところが心に響きます。
そして最後はホッと心温まるシーンが・・・。
そこは実際に鑑賞してほしいと思います。
まとめ 差別?区別?を無くすのは難しいが・・・
本作品は、先に書いたように私は『自由への大いなる歩み』という黒人隔離廃止を訴えたキング牧師の書籍を読んで後だったので、少し理解しやすかったですが、予備知識なしで鑑賞するともしかすると、いわゆる「胸クソ」と感じるシーンも多いと思います。
日本でも今、外国人への対応でかなり意見が分かれている状況ですね。
「差別か?」「区別か?」といった表現もよく聞かれるようになりました。
そういった問題にかなり昔からぶつかっていたアメリカでの状況がよく分かる描写がされているので、こういった作品(キング牧師の書籍も含めて)から、今後の日本人の行動をよく考えるきっかけになる良作だと思います。
今の微妙な日本に住む上でも、一度鑑賞してみてはいかがでしょうか?
ではでは。
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