最近ニュースで超有名企業が不正をしていたという事実が取り上げられているのをよく聞きます。
「国が定めた規格を満たしていない」とか「法律で定められた試験をしていない」といった内容のようですが、「あんな優良企業がなんで?」というのが正直な感想です。
色んな誘惑があったり、時間の制約があったりして「これぐらいいいか」と心が揺らぐことが多いのが社会人の常と思いますが、どうしたら道を踏み外さず誠実になれるんでしょうか?
このテーマは、曲がりなりにも中小企業で管理職をしている私もずっと悩んでいるテーマです。
そこで、今回はそんな「誠実さ」について様々な企業を研究してまとめた書籍『誠実な組織』について紹介します。
まずは著者のロン・カルッチ氏の紹介から
経営コンサルタント会社Navalentの共同設立者であり、ワシントン州シアトルを拠点とするマネージング・パートナー。30年以上にわたり、4大陸25カ国以上で、世界で最も影響力のある経営者たちが戦略、組織、リーダーシップの課題に取り組む支援をしてきた。現在、ニューヨーク大学のEthical Systemsの諮問委員会所属。以前はフォーダム大学大学院の組織行動学の准教授、Center for Creative Leadershipの非常勤講師を務めていた。講演者としても活躍しているほか、ハーバード・ビジネス・レビューやフォーブスに定期的に寄稿している。
Discover21 HPの著者プロフィールから引用
といった感じで、経営コンサルタントとして組織の課題に長く取り組まれているそうです。
そんなカルッチ氏の『誠実な組織』から、「誠実さを保つためには?」「誠実さを取り戻すためには?」について少し紹介します。
それでは、読んでいきましょう!
誠実さがない組織はどうなるか?
そもそも誠実ではない企業はどうなるのか?
イメージはなんとなくつきますが、カルッチ氏が取り上げた例を紹介します。
- 企業Aは持続可能性へのコミットメントを促進するキャンペーンを行った。しかし、環境問題や社会問題に関する適切な専門家の知見を取り入れていなかったために、ただのPR活動のようになってしまい、結果的に4億米ドルの売り上げ減少となった
- 企業Bはマネーロンダリングの疑惑があると名指しされ、翌年の売上が34%(10億米ドル)低下した。
つまり、表面的な行動や疑惑が残る商売は取引先・顧客の信頼の低下につながり、結果的に大きな損失になるということだそうです。
まぁ当たり前ですね。
誰だって信用できない物やサービスからは離れます。逆に信用できるものについては、少し高くても使い続けますよね。
私も年会費のかかるクレジットカードを使用していて、以前は「ちょっと、もったいないな」なんて思っていましたが、不正使用の可能性があった時に窓口の担当者が親身に速やかに対応してくれたので、被害がなく、すぐに通常の生活に戻ることができました。
いざという時も安心して使えることがわかったので、それからは、そのカードの年会費については全く気にならなくなりました。
誠実な対応は本当に大事です。
それではどうやって誠実さを守るのか?について紹介します。
誠実さを無くさないために
まず、カルッチ氏は誠実さは生まれつきの機能だとして、誠実な人は病気にかかりにくく、健全な人間関係を築くことができることが数多くの医学研究から分かっていると説明しています。
そして、人間は誠実でいることを好み、相手にも誠実さを求めるそうです。
それなのになぜ誠実さを無くすという現象が起こるのか?
カルッチ氏は行動科学者らが行った実験から次の結果が導き出されたとしています。
・普段は誠実で、相手に対しても誠実さを求める人々であっても、不誠実な行動がそそのかされる状況に置かれれば、徐々に不誠実さに屈してしまう(本人にそのつもりが無い場合でも)
「朱に交われば赤くなる」ということわざがあるように、これは真実だと私も思います。
ではどうすれば誠実さを無くさないか?
カルッチ氏は「希望がある」ことが、一人の人間にも組織にも重要だと伝えています。
「職場に対する不満」も「希望を失っている状態」であるとして、それを打破するには「約束は破られても、希望はくじかれないと、従業員が自信をもつことだ」と説明しています。
つまり、辛い状況であったとしても、希望がある環境または希望を持たせてくれるリーダーシップがあれば、組織の誠実さを保つことができるということですね。
なんか、精神論を主張しているようで、人によっては拒絶されそうですが、私自身の管理職経験からもこういった雰囲気を組織内で作る努力は必要だと思います。
世間を騒がせるような大きな事件が起こった企業では、多くの場合に「不満をためこんだ」「不当に扱われた」従業員が関わっていますね。
まだ誠実さが残っている組織は「希望」を持つことで、なんとかなりますが、すでに誠実さを失っている組織はどうやって取り戻したらいいんでしょうか?
誠実さを取り戻したい!
誠実さを維持する方法はカルッチ氏が本書内でいくつか紹介されていますが、組織に誠実さを取り戻す方法として、私が効果がありそうだと考えるのは、「言葉と行動を一致させる」です。
カルッチ氏は「アイデンティティを明確にする」という表現で説明されていますが、やはり人の信頼性は言動の一致だと私も思います。
社会人になって色んな人と仕事をすると、言動の一致しない人は本当にいて、本当に信頼できない事が身にしみて分かります。
カルッチ氏はペプシコCEOのインドラ・ヌーイ氏の例を元に、会社に対するコミットメントと自身の行動を合わせることで、企業としての目的(パーパス)に向かって従業員が突き進む組織作りを説明しています。
カルッチ氏が本書内で述べているように、こんな風に組織を変えていくのは非常に過酷だと思います。
私も小規模ながら組織の管理を任された経験から断言できますが、企業の目的がどれだけ魅力的(悪く言えばきれい事)であったとしても、従業員も大人ですから素直には信じません。そんな中で、企業の目的(パーパス)を浸透させて、行動に移させるには、トップ(CEOとか社長とか)の言動が一致していることが大前提になります。
つまり、一度誠実さを失った組織に誠実さを取り戻すためには、まず指揮をとる人が言動を一致させ続ける必要がありますね。そうすることで、少しずつ誠実さが浸透していくと思います。
何かしらの組織内についてだけではないですが、言動の一致は人の信頼性についての普遍の心理だと私も確信します!
まとめ
今回は経営コンサルタントのロン・カルッチ氏の『誠実な組織』から、組織の誠実さとその維持について少し紹介しました。
私の記事は、触りの部分をお伝えして少しでも興味を持ってもらえたらという目的で書いていますので、本質的な所のほんの一部でしかありませんが、組織が持つ『誠実さ』の意味が伝わると幸いです。
『誠実な組織』は非常に濃密な書籍で、様々な企業が実際に行った、誠実さを維持する又は取り戻す取り組みを紹介しているので、リアリティがあってとても面白いです。
企業組織ではどうしても誠実さよりも目の前の業務になりがちなので、そんな組織をどう管理したらいいのか?なんて悩んでいる若手・中堅の会社員の方に読んで頂けると良いのではないかと思います。
なんだかんだ言っても結局誠実さが大事!!
ではでは。
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