今年は秋の夜長に色んな映画を観ようと思い、アマプラを探っていたところ、アカデミー賞を受賞した作品で興味をそそられた作品があったので観てみました。
2014年公開の『セッション』という、ジャズドラマーを目指す青年とそれを指導する教師の物語です。
鑑賞前に各サイトのコメントを見ていると、「過去最高!」とか「圧倒されっぱなし!」みたいな言葉が多く並んでしたので、「努力・友情・勝利」的な感動ヒューマンドラマかと思っていました。
でも、蓋を開けてみると意外すぎる展開で「過去にない問題作!」であることはよく分かりました・・・。
まずは公式HPからあらすじを
名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない〈完璧〉を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠…。ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。果たして、フレッチャーはニーマンを栄光へと導くのか、それともたたきつぶすのか?ラストステージ― 二人が見せる衝撃の〈セッション〉の結末は?
成功を目指す学生が権威ある教授の指導について行きながら、様々な人生の岐路に立つという内容です。
それでは、本作魅力を少し紹介します。
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音楽家ってこんなに狂気なの?
まず、本作の根底にあるテーマは「才能vs狂気」または「成功には狂気が必要か?」というところだと思います。
そして、日本公開時に物議を醸したと記載してあるサイトがいくつも見られますが、その理由は次の一言に尽きます。
パワハラ
主人公のニーマンは全米1の音楽楽院に入学し、日々練習に励んでいます。
そこへ、権威ある教授フレッチャーがたまたま入ってきて、すこしの会話とドラム技術を確認します。
その場はそっけない態度で部屋を後にするフレッチャーですが、後日の講義中にニーマンをフレッチャーが指導するバンドの練習に誘います。
ここまでは、順調に成功の道を歩んでいる若者のように見えますが、その後の練習は観ていて心が痛むような地獄です。
まさにパワハラ・モラハラ。
それでも偉大な音楽家になるために耐えて練習するニーマンは、心を通わせた恋人を遠ざけ、ライバルたちを見下すような傲慢さももってしまいます。
当然、そんな生活や行動が成功するはずもなく、絶望の淵に立つことになるニーマン。
そんな中、ちょっとしたタイミングで再びフレッチャーとセッションすることになり、舞台に立ちます。
予告動画や各サイトで有名人や評論家が絶賛している「ラスト9分の衝撃!」が待っている訳ですが、そこは実際に鑑賞して頂いて、本作全体を受け止めてもらいたいと私は思います。
以前に紹介したボブ・ディランの自叙伝的映画『名もなき者』ティモシー・シャラメと同じように、ニーマンを演じるマイルズ・テラーは素人の私には超絶技巧のようなドラムを演奏しているように見えます。
「こんなに上手くて、何がだめなの?」と素人は感じてしまいますが、フレッチャーから「テンポが少し遅い・早い」といったところから、「規定のテンポが維持できるまで永遠とやる」といった指導があり、「本気の音楽家ってこんな狂気なの?」「音楽家にとってこれは普通?」と、かなり胸がざわつくような感想が強く残りました。
実際に音楽をしていた人にどのように映るのか気になるところではありますが、「成功のためには、人生も人格も犠牲にしなくてはいけないのか?」という大きな疑問というか葛藤を強く考えさせられる作品ではあると思います。
日本ではパワハラ・モラハラの対策に本格的に取り組んでいる最中ですから、ある意味では今鑑賞するタイミングではあるかもしれません。
高圧的なシーンが苦手な方は心して鑑賞してみてください。
私は褒めて伸ばす方が好きだけどなぁ・・・。
ではでは。
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